いつかの生活と本

いつかの生活と本

本と舞台と旅行が好き

クリエイターの未来の描き方を感じ、自己嫌悪に陥った。 #マル秘展に行ってきた

巷がイルミネーションで浮かれている今日この頃、六本木の21_21 DESIGN SIGHTで行われている「マル秘展 めったに見られないデザイナー達の原画」に行ってきた。

この企画展はタイトルそのままに、超有名デザイナーの方々がどういう思考で創作しているのかを原画ベースで辿ろうというコンセプトなんだが、、、これがめちゃくちゃかっこよすぎて、吐き気するほど自分が嫌いになった。

超有名デザイナーとは、グラフィックデザイナーの原研哉・松永真、照明デザイナーの面出薫、デザインエンジニアの山中俊治などなど。作品を見れば「ああ!これ見たことある!すごいいいよね!」と思うようなデザインを世に送り出してきた人ばかりだ。

 

展示方法としてはとてもシンプルで、ショーケースにデッサンやら試作品やらが並べられているだけなんだけど、デザイナー毎に思考方法が全く異なっていて、その違いを読み解くのがとても面白い。

ひたすらデッサンをして体に概念をしみこませてからデザインコンセプトを考えている人もいれば、直感的に試作してみてクライアントに投げる人もいたり。きっと全員プロセスが違うし、こだわっているポイントも違う。そして、その違いが作品に活きている(と私は思った)。

f:id:tbtnb18:20191215122109j:image

このようなアーティスティックな仕事の一面を垣間見ると、大勢の人が良いと思える共通項とは何かが気になる。

デザインは商品やサービスとそれを伝えるべき対象者(大抵は一般市民)が定まっている場合が多い*1。それでいて正解がなく数字でも測れない。判断基準はとてもシンプルで、対象者が気に入るかどうか。それなら世に打ち出してさっさとウケを判断したいものの企業イメージを頻繁に変えるのは難しい。企業イメージに直結する仕事であり多額の投資がされているので失敗も許されない。

だから、常に大衆ウケするものを考えるという点において、デザイナーはとてもシビアな世界にいるんじゃないかと思った。

 

そんなことを考えたときに、すべては未来志向ベースなのかなと考えた。

未来志向ベースというのは、「この商品は10年後にこうありたい!」「このサービスを使ったら、こんな幸せが待っている」みたいな夢をひたすら語るということ。

企業の人もそれくらい考えてるよ…と思うかもしれないけど、社会的なインパクトの大きな未来を語れる人ってそんなに多くない。この商品を使ったら〇〇の苦労が解消する、くらいは言えるかもしれないけど、その苦労が解消されるとその人の生活がどのように変わって、どれくらい幸せになって、、、とストーリーを語れる人は少ない。特に企業の人はその商品を知りすぎていて、実際の生活が見えていないことが多い。

で、そういった大きな夢を少年のような心で語り、視覚的に魅せ、消費者が共感し、その人たちを動かしていくのが一流デザイナーなのかなと思った。(デザイナー、かっこよすぎかよ…)

未来志向ベース、いわばムーンショットみたいな話は、たくさんの人の心を掴んで「あの商品良いよね」に繋がるんだろう。

f:id:tbtnb18:20191215131011j:plain

原氏の作品(コンセプトを分かりやすく絵に落とせるのがかっこいい)




f:id:tbtnb18:20191215131020j:plain

面出氏の作品(スケッチで概念を捉えていてかっこいい)


そんな半ば妄想のような考え事をしながら原画を見ながら考えていると、自分の仕事はデザイナーとは対照的にプロセスベースになっていて、ひどく凹んだ。

私の仕事はクライアントの要望が決まっているのが基本なので、その枠の中で仕事をするというプロセスベースになっていた。お金をもらって仕事を受けているので、ゴールとか将来像が決まっているのは当たり前っていえば当たり前なんだけど、それだと新しいことは何も生まれないし、誰も熱狂しないよな~~~。

プロセスベースで仕事するほうが楽にお金稼げるのはよくわかるけど、それじゃあ面白いことはできないので、少しは大きな夢を描きながら仕事をしたい。

もはや、展示をすべて見て退館する頃には、マル秘展とは全く関係のない決意をしていた。

 

会場の外に出ると日が暮れていて、ミッドタウンのイルミネーションがとても綺麗だった。青い光の道は大勢の人でにぎわっていて、これもまた誰かのデザインの勝利なんだよな。

 

***

この特設サイトは、実際の原画が公開されており、とても良いです。(というか、このサイトで大抵の人は満足するので、遠方で行けない人も覗いてみるといいかも)

インタビューは助長なので、マニアしか面白くないと思います。

designcommittee.jp

<さいごに>

この企画展行く人は、デートがいいです。六本木でちょっと良い店のランチを食べ、展示を見てあーだこーだ言って、イルミネーションを見て帰る。このコース完璧なので、誰か実践してください。

*1:デザインにもいろいろな種類があるけど、ここでいうデザインとは商品デザインとかロゴとかを意味します。